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(このトピックはまだ書きかけです。ご了承の上お読み下さい)

心臓病の食事

このコミュニティ内でも、個人的にも、獣医師としても、

「心臓病の時の食事はどうしたらいいの?」

というご質問を多く頂いています。

そのため、ここで心臓病の食事に対する伊藤の考えを述べたいと思います。

ごはんの情報は様々です

飼い主さんの立場としては、食事を食べた、食べないというのは
見た目にもわかり易く、それゆえに気になる点でもあります。

その割に、ペットの食事に関する情報はと言うと、
様々な説がごっちゃになって飼い主さんにしてみれば

「何が何だか分からない」

という状態になってしまっているのが現状です。

どうしても、フードという「商品」が関わっているため、
利害が絡んでくる面もあり、情報が捻じ曲がってきてしまう例もあるようです。

人間のサプリメント・健康食品業界もほぼ同様だと考えています。

そんな現状で、どう考えたら良いか?

ただ、どんな問題であれ、普通は様々な説があるものですし、
最良の方法はケース・バイ・ケースだと思っておりますので、

「これは正解で、これは間違っている」

という見方は適切ではないと伊藤は考えます。

また、真面目にフード、サプリメント、健康食品を売られている方もおられる訳ですし、
有益なものもある事を知っていますから、実際以上に不安をあおり立てたくもありません。

バランス感覚を持って物事を見るためには、それぞれのメリット・デメリットまで
ちゃんと知った上で冷静に判断する必要があります。

うかつな情報の伝え方をしてしまった場合、以下の事が起こりかねません。

  • メリットを伝える  →  このフード、サプリメントは最高だ!
  • デメリットを伝える →  このフード、サプリメントは最低だ!

そのため、食事に関するご質問をネット上で回答するのは多方面にまで気を配る必要があり、
なかなかすぐに回答できずにおりました。
(直接お会いできれば簡単なんですが)

でも、食事が大事なのは間違いありませんので、

  • 完璧な食事などありえない
  • このトピックも伊藤個人の一つの意見に過ぎず、必ずしも正解ではない

というところを強調した上で、お話ししていきたいと思います。

以上、長〜い前置き&言い訳でした。

普通の食事が大切です。

それでは心臓病の子の食事についてお話しします。

「心臓病の子には、何をあげれば良いの?」

と聞かれますが、伊藤の見解としては、

「あまり注意する点はありません。普通の食事をあげて下さい。」

となります。

と言うと、

  • 「普通の食事ってどういうものですか?」
  • 「どんな銘柄のフードが良いんですか?」
  • 「塩分は控えなくっていいんですか?」
  • 「サプリメントは必要ないんですか?」

などの質問が出てくるかと思いますので、順を追って説明していきます。

普通の食事とは

まず、普通の食事の定義ですが、

変な食事以外のもの

となります。

これだけではあなたの頭上に?マークが浮かぶでしょうから、もうちょっと説明します。

変な食事というのは、例えば、

  • ジャーキーしかあげない
  • ささみ以外食べさせない
  • お菓子ばっかりあげ続ける

というような食事内容の事を指します。

上記の食事内容を見て、「これは有り得ないだろう」と感じられる方でしたら
恐らく今の食事内容で大丈夫だと思います。

市販のフードでも良いでしょうし、
病院で勧められたフードでも良いでしょうし、
手作りしてらっしゃる方はそれもOKです。

ただ、大事なポイントとして、

特にフードに当てはまるのですが、その子によって、合う、合わないがあります。

それはフードの質にもよりますし、個体差として合わない場合もあります。

食べさせていて特に気になる点が無いのであれば大丈夫ですが、
何か不都合を感じたときに、他の方法を試してみるという柔軟性は忘れないで下さいね。

フードは質を求めるものでは無い??

「心臓病の時は、普通の食事を与えて下さい」

とお伝えしました。

そのため、どんなフード、手作りごはんでも良いと伊藤は思うのですが、
フードの質が気になるという方もおられると思います。

実際、安いものから、高級なものまで、様々なフードがあります。
値段に応じて、質も違ってくるでしょう。

でも、究極的な話を言えば、

フードに病気の対処に対する質を求めてはいけません。

フードの最大の利点は、便利さと、その便利さに比べた安さです。

人間の食品で考えてみましょう。

カ○リー○イトという商品があります。
箱の裏を見ると、いかに色んな栄養素が含まれているかが書いてあります。

でも、それを見て、

「この商品は何て質が高いんだ!
 これから一生これを食べていれば、健康間違い無しだ!
 今かかっている病気にも良いに違いない!」

と考える人はあまりいないはずです(多分)。

そうではなくて、

「こんなにお手軽に、こんな安い値段で、これだけの栄養がとれて便利だ!」

という売りの商品じゃないかと思うんです。
(メーカーの人間じゃないので推測ですが…)

食事の質よりも大切なこと

本気で質を高めたいのなら、手作りです。
ですが、どこまで行っても完璧な食事などはありえません。

「どのレベルなら一番愛犬と楽しく暮らせるのか?」

という問いが絶対に必要になります。

その問いかけを抜きにして食事にこだわっても終わりがありませんし、
愛犬との暮らしが楽しくなるとは僕には思えません。

そう考えると、選択肢の一つとしてフードは大事なものですし、
現在フードを使っている方は決して、断じて、間違いだとは思いません。

「いいものを食べさせるため」に愛犬と暮らしているのではなく、
「楽しく幸せに暮らすため」に一緒にいるわけですから。

そういった意識を忘れないでいて欲しいと思います。

療法食について

フードの質に対する考え方をお話ししたところで、
病院でもらってくる、療法食(りょうほうしょく)についても触れたいと思います。

療法食というと、病気を治してくれそうな名前ですが実態が良く分かりません。
「制限食」と呼んだ方がイメージしやすいかもしれません。

凄く大雑把に言ってしまうと、

「この病気の時は、○○という成分が駄目だから、○○を減らしたフードを作りました」

これが療法食です。

心臓病の場合、悪役にされるのが塩分です。
だから心臓病用の療法食は簡単に言ってしまうと減塩食です。

先に結論を言ってしまいますと、

減塩をした方が本当に心臓に良いのかは、まだはっきりとは分かっていない。

となります。

むしろ、塩分を減らしすぎるとかえって心臓に害があるという説もあるくらいです。
そのため僕は、心臓病用のフードを積極的にオススメはしていません。

誤解が無いように言っておきますが、
食べてはいけないという意味ではありませんのでご注意下さい。

何で塩分が悪役にされているのか?

塩分がなぜ心臓病の時ダメだと言われるのかと言いますと、
それは水分と深い関係があります。

細かい仕組みは難しいので省きますが、

  • 塩分とは、塩化ナトリウム(NaCl)の事で、塩素とナトリウムから出来ている
  • ナトリウムが身体に溜まると、水分も溜まる

という二点は覚えてしまって下さい。

これを踏まえて、何故心臓病で塩分がダメと言われるかを考えてみますと

心臓病の子が塩分をとる
  ↓
 身体にナトリウムが増える
  ↓
 ナトリウムが増えたので、体の水分が増える
  ↓
 体の水分には血液も含まれるので、血液の量が増える
  ↓
 血液の量が増えると心臓の仕事や血圧が増す
  ↓
 心臓に負担がかかる

という流れになります。

似たような感じで、

 心臓病の子が塩分をとる
  ↓
 ノドが乾くので、水を沢山飲む
  ↓
 沢山飲んだので、体の水分が増える
  ↓
 体の水分には血液も含まれるので、血液の量が増える
  ↓
 血液の量が増えると心臓の仕事や血圧が増す
  ↓
 心臓に負担がかかる

と説明される事もあるようです。

結局、

「塩分をとると身体に水分がたまり、血液の量や血圧が増し、それが心臓の負担になる」

そういう説です。

同様の理由で、人でも高血圧の時に「減塩を!」と言われています。

しかし塩分は排出もされます。

上記の理由により、確かに水分が身体に溜まると心臓にとって負担になるのは事実です。

ですから、利尿剤(りにょうざい)は心臓病の有効な治療法なのです。
おしっこが沢山出れば、身体の水分が減りますから。

「じゃあ、やっぱり塩分はダメなんじゃないの?」

と思うでしょうが、ちょっと待って下さい。

身体の中に入ったナトリウムは、ずっとそのままでしょうか?
食べれば食べるほど、身体に蓄積されていくのでしょうか?


違います。
やがて、ほとんどは尿として排出されます

「犬は人間と違って汗をかかないから、塩分は排出できないんだ。」
という話も聞いた事があるかもしれませんが、
これは「汗としては出しにくい」と言っているだけです。

ナトリウムが入ってこれば、過剰な分を尿として出す。

こういう仕組みを身体は持っています。

ナトリウムに限らず、全てにおいて身体の中の状態を一定に保とうとする仕組みが
生き物には備わっています。

  • 体温がある範囲で一定なのも、
  • 血圧がある程度で一定なのも、
  • 血糖値が一定範囲で維持されているのも

全て、身体がやってくれている事です。

そのため、
腎臓病などで尿が上手く作れないなどの特殊な事情がなければ、
ナトリウムが体に溜まりすぎにはなりません。

むしろ食事からとるナトリウムを極端に減らすと、

「ナトリウムが少なくなった!一定に保つためにもナトリウムを体に溜め込もう!」

という動きが起こります。
その動きが心臓にとって悪影響になるという説もあるくらいです。

ちょっと細かいところまで踏み込みましたが、理解できましたでしょうか?

今のところ、塩分を積極的に減らさなければならない理由はあまり無いという事です。

減塩はしても良い

ここでの理解で大事なのは、

「そんなに減塩を考えなくても良い」

という事であって、

「減塩をしてはいけない」

という事ではありません

実際、犬や猫が少ない塩分でもやりくり出来るのは事実のようです。

ですから、現在塩分制限をしている人に「やめなさい」という理由もあまりありません。

その逆に、

塩分を減らさないとダメだと言う話も、そんなに根拠は無いですよ

という事です。

善悪論は危険です。

これも大事な視点なのですが、塩分は極めて大切なものです。
断言できますが、塩分がゼロだと死にます。

どうも世の中の論調が分かりやすさを狙ってか、
「良い」「悪い」の二つに簡単に分けられる傾向があります。

  • カルシウムは良いものだから、たくさん摂取しましょう。
  • 塩分は悪いものだから、摂取を控えましょう。

こんな感じです。

カルシウムだって摂り過ぎは害ですし、
塩分だって摂取不足なら害が出ます。

同様に

  • 善玉コレステロール、悪玉コレステロール
  • 善玉菌、悪玉菌

これらはある一面から見たとき、好ましいか好ましくないかという話に過ぎません
そんなに簡単に善悪など決められる訳がありません。

ちょっと話が逸れてきましたが、
極端な摂取や制限は何にせよ好ましくないというお話でした。

分かった上で、選ぶのはあなた自身です。

今までお話しした内容を踏まえれば、
かかりつけの獣医さんの考えも理解できるようになります。

  • 塩分を控えるように勧める獣医さん
    「塩分少なめでも犬猫に大きな問題は無い。
    それなら心臓に負担のかかる可能性も有り得るし減塩をオススメしよう」
  • 塩分を控えるように勧めない獣医さん
    「塩分で心臓に負担がかかるとは言い切れない。
    それならわざわざ塩分を控える必要も無いし、そのままのフードで行ってもらおう」
  • 伊藤個人の考え
    「塩分で心臓に負担がかかるとは言い切れない。
    しかし塩分少なめでも犬猫に大きな問題は無い。
    じゃあ結局何でも良いのでは?(わざわざ減塩を勧めたりはしないけど)」

もちろん最終的に選ぶのはあなた自身です。

一番の目的はあなたと愛犬が楽しく暮らす事ですから、
その目的に合いそうな食事内容にしてもらえればOKです。

「減塩しなきゃ…」と不安になるのであれば無理に頑張る必要はありませんし、
逆に塩分を控えた方が安心できるのであればどうぞ続けて下さいという事です。

心臓病の時の水分摂取

塩分のお話が一段落ついたところで、次は水分摂取についても触れます。

塩分がダメだ!と言われているのは、

「塩分をとると身体に水分がたまり、血液の量や血圧が増し、それが心臓の負担になる」

という理由からでした。

すると、次なる疑問として浮かぶのは、

「じゃあ、水分を多く摂ると同じように心臓に負担がかかるのでは?」

というものです。

確かに、上記の理由で心臓病の子に水をあまり与えない方が良いという意見もあります。
しかし、現在は摂取する水分は減らさないという方針が主流になってきています

なぜかというと、塩分と似たような感じで、

「水を飲めば、その分おしっこが増えて出て行くから大丈夫。
むしろ脱水の害の方が大きい。」

と考えられるようになってきたからです。

ですからこちらも塩分と同じく、むりやり飲ませる量を増やさなくても良いですし、
逆にわざわざ減らさなくても良い訳です。



''結局、最初に言ったように「普通の食事」にしてくれれば大丈夫です。
まずこれが大前提だという認識を持つようにして下さい。

とは言え、
心臓病の時に有益な食材、サプリメントなどがあるのなら知りたいという
方もたくさんおられると思います。

次回からはそんな話題にも触れていきます。
(すいません、まだ書きかけです。)

「ごはんを手作りであげたいけど、よく分からない」なら

不定期開催ですが、ペット食育協会主催のセミナーがあります。
伊藤も関東地方で講師をしています。
ご興味のある方はご覧下さい。

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