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心臓病と感染症

質問

2歳半のトイプードルがいます。
初期の僧坊弁閉鎖不全と診断されていますが、本犬はいたって元気です。

心臓病の多くは原因が特定されてないと思うのですが・・。

もしも、なんらかの病原菌が体内にいる場合、弁膜症の症状になりえますか

もし、なりえたとしたら、その病原菌を退治できれば弁膜症の症状は改善するのでしょうか

さらに、そういった病原体が潜んでるかどうかの検査というのは、可能なんでしょうか
可能であれば、検査名?検査方法をしりたいのですが・・。

回答

ご質問ありがとうございます。

このご質問は、

  • 「病原体に感染して心臓病になる事はあるか?」
  • 「その病原体を退治すれば治るのか?」
  • 「それを見つける検査はあるのか?」

という意味だと受け取りました。
(間違っておりましたらご指摘下さい)

回答させて頂く前に、恐らくこのトピックを見られている多くの方にとって、

「病原体」とは何か?

という整理をしておく事が今後の回答を理解しやすくすると思いますので、
まずはそこからお話しさせて頂きます。

病原体とは

「病原体」とは読んで字の如く、病気の原因となるものですが、
それを大まかに分けると以下のものがあります。

  • ウイルス
  • 細菌
  • カビ
  • 寄生虫
  • ほか

どれも聞いた事はあると思います。
ここで大事なのは、

1.上記のものはどれも違うものです。

たとえばウイルスと細菌はまるで別物です。
なので細かい話になってしまいますが、ウイルスは菌ではありません。

2.当然、治療法も違います。

たとえば細菌は抗生剤という薬を使うと退治出来ますが、
ウイルスに対してはそのような薬はありません。

3.見つけるための検査法も違います。

「一つの検査をしたら、ウイルスも細菌もカビも寄生虫も見つかった」などと言う事はありません。

4.でも、どれに感染しても「感染症」と呼びます。

例 ウイルス感染症、細菌感染症……

という理解です。

ですから正確にお答えしようとすると、

  • ウイルス感染の時は…
  • 細菌感染の時は…

のようにもなりかねない訳ですが、
そんな事をしても分かりにくくなるだけですので、全体的な話をしようと思います。

ですので、説明の際に「病原体」という言葉を多用しますが、
上記の点を頭の片隅においてお読み下さいね。

病原体と僧帽弁の病気

前置きが長くなりましたが、
まず、

「病原体が原因で僧帽弁が厚くなり逆流が見られる事があるか?」

というご質問への回答ですが、有り得ます

有り得ますので、
病原体を退治できれば、その状態の悪化は抑えられると考えられます。
症状の改善というレベルまで行くかは病気の程度次第だと思いますが。

しかし、上記の話は「病原体が原因で起こった心臓病」についてのお話です。

ちょっと細かい話になりますが、
多くの犬がかかる僧帽弁閉鎖不全症(弁膜症)と、
病原体が原因で起こった心臓病は違う状態
だと言われています。

ほとんどの僧帽弁閉鎖不全症は、
「何かの感染も見つけられないが、なぜか僧帽弁が変化していってしまう」
という病気です。

事実、僧帽弁閉鎖不全症の子の心臓と、細菌感染による心臓病の子の心臓を
調べて比べてみると違った状態になっているという話もあります。

ですから、「病原体を退治出来たら上手く行くかも」というお話は
一般的な僧帽弁閉鎖不全症の場合でも通用するかは分かりません

病原体の治療は

また、病原体と一言で言っても色々な種類があります。
治療も手が出せるものと出せないものとがあります。
細菌ならば抗生剤で良いのかもしれませんが、
ウイルスを直接退治してくれるような薬は今のところありません

検査で見つけられるか?

さらに残念ながら、病原体の退治がどうこう以前に、
一般的な動物病院が行う事の出来る検査で心臓の感染症を見つけるのは
かなり難しいと言わざるを得ません。
色々な検査結果、症状、所見などから総合的に診断しているのが現状です。

まとめ

大多数の犬がかかる僧帽弁閉鎖不全症の場合は、

  • 病原体が関係しているか明確な証拠は見つかっていない
  • そのため病原体に対する治療をしても良くなるかは分からない
  • 治療したくても難しいものもある
  • そもそも病原体が関係しているか検査するのも難しい

という事になります。

結構否定的な事ばかり述べてしまいましたが、

「証明されていない = 存在しない、正しくない」という事ではありません。

全くもって個人的な意見なので、独り言と思って聞いて頂きたいですが、
僕は病原体が関わっている病気は、現在言われているよりも沢山あるだろうと思っています。

動物病院は今持っている方法以外のものは提供出来ません。
ですから通常の動物病院で提示される方法と違うものを求めるのであれば、
違う視点からアプローチをする専門家の方を探されるのも一つの方法かも知れません。

愛犬は現在「いたって元気」との事ですので、かかりつけの先生と良く相談されて
元気な状態が長く続けられる事をお祈りしております。
どうぞお大事になさって下さい。

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