心臓病トピックスへ戻る

心臓病と体重管理

「肥満すると心臓に負担がかかります。」

という話は、一度は聞いた事があるのではないかと思います。

体重に関しての質問も沢山頂きましたので、
ここでは心臓病と体重管理についてお伝えしていきます。

まず、良く言われる「肥満すると心臓に負担」ですが、

これは本当です。

身体が大きいほど、血液を多く必要とし、
そのために心臓は頑張る必要があるからです。

ただし、中には「心臓に負担」という言葉を聞いただけで
不安な方もおられるようです。

「肥満すると心臓に負担」は事実ですが、もちろん程度問題です。

ちょっと太ったが最後、もう大変な負担が心臓にかかるという話ではありません

  • 「息が苦しそうな時がありますが、太って心臓に負担がかかっているのでしょうか?」
  • 「ウチの子は太り気味ですが、今も心臓は辛い状況なのでしょうか?」

というような質問も多いのですが、これらも、
よほど太っていたり、心臓病が進行していない限り、そんなに問題無かったりします。

大事な愛犬の事ですから、気になる気持ちは良く分かります。

ですが、
本当に愛犬の事を考えるのであれば、
あなたの心の平静を保てるような視点・知識を持つ事がまず大切です。

ちなみに、

  • 「散歩させたら心臓に負担でしょうか?」
  • 「興奮させたら心臓に悪いでしょうか?」
  • 「塩分を摂らせたら心臓に悪いでしょうか?」

などの良くある不安も同様です。

心臓病のコミュニティですので心臓が話題にあがるのは当然なのですが、
生き物は心臓だけで生きているわけではありません

その他の臓器、精神面、生活環境、飼い主との関係…etc。
広い視点で見ないと、願ってもいない結果に辿り着いてしまう場合があります。

人間は自分の事だとなかなか冷静な判断がしにくいものなので、

「もし上記の相談を知り合いから受けたら自分は何と答えるか?」

という視点でちょっと考えられてみるのも良いかも知れません。

また、こちらも不安になっている方が多いですが、

「肥満しているから心臓病になる」は犬で証明されていません。

人間でメタボリック症候群のリスクの中に心臓病が挙げられていますが、
これを犬にそのまま当てはめる事は出来ません。

なぜなら、

  • 人間は血管が詰まってしまうタイプの心臓病が多い
  • 犬の場合は弁がダメになってしまうタイプのものが多い

という違いがあるからです。
違う病気ですから、同じようには考えられません。

というわけで、ここまでをまとめますと、

「もちろん肥満よりは、適正な体型を保てた方が良い。
でも、太る→心臓病がすぐ悪化!心臓病になる!のような考えだと、
かえってあなたも愛犬も辛くなるかも」

となります。

心臓病であってもなくても、肥満はおすすめできません。

なぜかと言うと、「損をする事が多いから」なんですね。
例を挙げましょう。

  • 検査しても良く分からなくなる

獣医師が動物病院で診察をする時、身体を良く触ります。
まずこの時点で肥満している子は内部が良く分かりません

それだけでなくレントゲンを撮っても、超音波検査をしても、
太れば太るほど内部が良く見えなくなってきます。

こればっかりは獣医師でないと分からないと思いますが、
きれいに見える子と、良く見えない子の差はかなり大きいです。
せっかく高性能の診断装置を用意し、検査の腕前を磨いても
太っているだけで台無しになるのは悲しいものがあります。

とにかく、検査をしても見えないものは診断のしようがありません。

同じ料金で同じ検査をしている訳ですから、もったいない話だと思います。

  • 足腰に負担がかかる

体重が重くなると当然、それを支える足腰に負担がかかってきます。
加えて、太った子は運動自体を嫌がるようになり、
その結果さらに太っていくという悪循環におちいりがちです。

  • 麻酔のリスクが高まる

太っている子はどうしても麻酔の量が多く必要になります。
さらに脂肪が多いと麻酔薬がそこに残りがちなので、
麻酔から醒めるのも時間がかかりやすくなります。

  • 薬の量も見極めにくい

上記の麻酔と似ていますが、飲み薬に関しても同じです。
脂肪の量が多いと、薬の適切な量を決めるのが難しくなってきます。

  • もちろん健康にも良くありません

「犬の心臓病の多くは肥満が直接の原因ではない」と前回お伝えしましたが、
だから太っていても全く問題が無いという話ではありません。

以上から、結論としては、

やっぱり、健康的な体型を保つに越した事はない

という事になります。

もちろん上記のリスクを分かった上で

「ウチの子はこの体型がいいんだ!」

とおっしゃられるのであれば、それは価値観の話になりますので僕があれこれ口を挟む問題ではありませんが…

体型のチェックの仕方

肥満によって起こる事を中心にお伝えしてきました。
次は、体型のチェック法についてお話しします。

まず、チェックには「体重ではなく、体型を見る」事をおすすめします。

体重を見るのも良い方法ではあるのですが、
例えば同じ5kgの子だとしても、

  • 筋肉で引き締まった5kg
  • 脂肪でブヨブヨの5kg

の両者では全然内容が違います。

また、同じ犬種でも骨格の大きさが違う場合がありますから、
やはりその子の体型を見るのが間違いが少ない方法になります。

体型を見る場合のチェックポイントは以下の3つです。

  1. 背骨
  2. 肋骨(いわゆる「あばら骨」)
  3. 腰のくびれ

1と2に関しては、「触ってみて骨があるのが良く分かるかどうか?」がポイントです。
太ってくると皮下脂肪に阻まれて骨の感触が無くなってきます。

3は犬を「上から見た場合にくびれがあるかどうか?」です。
太ってくるとくびれが無くなってきます。

これらのポイントを総合して、明らかに太っていると思えるレベルであれば
ダイエットを考えるのがオススメです。

「どの辺りが正常かどうか分からない!」

と思うかもしれませんが、あまり厳密にやる必要はありません
判断に迷う程度なら、そこまで大変な肥満ではありません。
あなたが「明らかに太っているな」と感じる点を、まずはダイエット開始ラインにしてみて下さい。

経験にある程度左右されるのも事実ですから、自分の感覚にどうしても自身の持てない方は
一度かかりつけの先生にみてもらうのもオススメの方法です。

という感じで愛犬の体型を月に一回くらいでいいですからチェックしてあげて下さい。

ダイエットについて

体型チェックで肥満が判定できるようになったら、次はダイエットについてです。

本格的に話すとこれだけでかなりのボリュームになってしまいますので
ここでは概要を伝えて終わりにさせて頂きます。

犬のみならず、人間でもダイエットに対して興味津々な方は多いかもしれませんが、
やっぱり基本は

  • 消費エネルギー量を増やすこと
  • 摂取エネルギー量を減らすこと

になります。

残念ながら、この点を避けて楽にダイエットしようと思っても、
あまり根本的な解決にならない事が多いのはご存知だと思います。

もっと運動を!

まず最初の「消費エネルギーを増やすこと」ですが、
つまりは「もっと運動しましょう!」という事です。

実際問題、運動量が足りていない子はとても多いです。
運動量が足りなければ、筋肉も付きませんし、身体の代謝も鈍くなります。
こうなるとなかなか痩せにくい状況になってきます。

でもウチの子は心臓病だから、散歩は出来ないでしょ?

と言う意見もあるかと思います。
確かに、動いたが最後、呼吸が苦しくなってしまうような子に「運動を!」と
すすめるのは自殺行為になりかねません。
でも、そこまで病気が進行していなければ、
むしろ適度に運動する事は全身的に有益な場合が多いです。

「心臓病=どんな子も運動はしちゃダメではない」という点は覚えておいて下さい。
どんなものでも「程度はどうなのか?」という視点が大事です。

しかし、現代は飼い主もとても忙しく、運動の時間がなかなか取れないという
ケースも多くあります。(かく言う僕も運動不足をどうするかが課題です)
ですから、「出来る範囲で運動量を増やす工夫をしてみる」という取り組み方がオススメです。

次に、「摂取エネルギーを減らす」ですが、

これは「食事で摂るカロリーを減らしましょう」という事です。

一番簡単なのが、フードの量を単純に減らしたり、減量用のフードに変える事です。

ただ、この方法は場合によっては飼い主から見て、

「たったこれだけ?」

というような量になる事があります。

フードを減らしても太っていくのであれば、見た目どんなに量が少なくても
愛犬にとっては多いという事の証明なのですが、大抵飼い主側が音をあげます。

僕の経験上、このフードの量を減らす方法で失敗するのは、
ほとんどが愛犬の「もっと食べたい」要求に飼い主が折れるケースです。

ですから、精神的にもっとマイルドにやりたいのであれば以下の方法をオススメします。

  • フードを減らした分、野菜などをトッピングする
  • 手作りごはんに変える

一つ目の野菜トッピングについてですが、
ここでの注意点は「フードをちゃんと減らす」です。

それをせずにトッピングだけしたら、当然ながらなかなか痩せません。
野菜はネギ類以外でしたら、思いつくものは何でも結構です。
ニンジンやカボチャのような自然な甘味のある野菜が好物の犬は多くいますので
色々試してみて下さい。

二つ目の手作りごはんですが、これはやってみると分かりますが結構強力です。
このダイエット効果だけでも手作りを試してみる価値はあると僕は思っています。

という感じでざっと対策を紹介してきました。
もちろん「これでなければいけない!」というようなものはありません。
それぞれの家庭の事情に合わせて選択してもらえれば良いと思います。

最後の締めくくりになりますが、一番の目的は

「愛犬と楽しく暮らすこと」

です。

ですから、体重管理も無理なく出来る範囲で楽しくやって下さい。
「肥満で心臓は大丈夫だろうか…?」なんておびえながらの生活は楽しくないですからね。

このトピックが、「あなたと愛犬が楽になれる選択が出来る」役に立てる事を願っています。
長文になってしまいましたが、お付き合いどうもありがとうございました。

手作りごはんに関して不安や疑問がある方は

伊藤も所属しているペット食育協会(APNA)のセミナーがおすすめです。
各地でセミナーが開かれていますので、ご興味のある方はどうぞ。

ペット食育協会

心臓病トピックスへ戻る


a:16699 t:3 y:2