犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行のしかた

犬の僧帽弁閉鎖不全症がどのような経過をたどるのかについて説明します。

大まかな流れ

生き物は機械ではないため、病気の進行のしかたはケースバイケースです。

それを承知の上で大雑把に言うと、僧帽弁閉鎖不全症は

  1. 僧帽弁が変化して血液が逆流
  2. 心臓が大きくなる
  3. 肺など心臓以外の臓器にも影響

という3ステップで進行していきます。

僧帽弁閉鎖不全症の進行度の分類

犬の僧帽弁閉鎖不全症の進行度については、アメリカ獣医内科学会(ACVIM: American College of Veterinary Internal Medicine)のガイドラインによる分類がよく用いられます。
今のところ2019年版が最新バージョンで、無料公開されているので誰でも読むことができます。

犬の僧帽弁閉鎖不全症のガイドライン

「読んでみたいけど英語が苦手…」という人はDeepLという翻訳ツールが助けになるかと思います。

このガイドラインによる分類を、さっきの病気の進行に当てはめると以下のようになります。

ステージA

僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種(好発犬種)がこのステージAに入ります。
つまり、まだ病気ではない段階です。
「まだ病気じゃないんだけれど、他の犬種に比べると僧帽弁閉鎖不全症になるリスクが高いから気をつけてね。定期検診してね」という段階です。

ステージB

このステージBから僧帽弁閉鎖不全症と診断される段階に入ります。
僧帽弁が変化してうまく閉まらなくなり、心臓の中で血液の逆流が起こり始めた段階です。
ステージBはさらに心臓の大きさでステージB1とステージB2に分けられます。

ステージB1

僧帽弁での血液の逆流はあるけれど、まだ程度が軽いので、心臓のサイズは正常な段階です。
一般的には、この段階であれば犬に自覚症状はありません。
軽度の進行具合というイメージです。

ステージB2

ステージB1の頃よりも血液の逆流が多くなり、血液の渋滞(うっ血)が起こり、心臓がふくらんで大きくなってくるとステージB2と判断されます。
この段階では、無症状な子もいれば、咳などの症状を見せる子もいます。
中程度の進行具合というイメージです。

ステージC

ステージCは心臓で起こっていた血液の渋滞が肺にも及び、肺に水が溜まった段階です。
この肺に水が溜まった状態のことを肺水腫(はいすいしゅ)と呼びます。

肺水腫の程度はさまざまで一概には言えませんが、ひどければ呼吸困難を起こし、死亡のリスクもありえる段階です。
ちなみに肺水腫を起こしてから持ち直す子も結構いますが、とにかく一度肺水腫になれば、このステージCと判定されます。
重度の進行具合というイメージです。

ステージD

ステージDのキーワードは「難治性」です。
頑張って治療しているにも関わらず、症状が改善しきらず、あまり良い状態を保てない段階です。
いわゆる末期状態で、治療をしていても急変のリスクが高い段階です。

まとめ

ステージAからDまでの特徴をまとめると、こんな感じになります。

実際にはこの分類がうまくマッチしない子もいますので、あくまで大まかな目安と考えてくださいね。