猫の心筋症の原因について解説します。
原因は不明です
猫の心筋症は、大半のケースで原因不明です。
何しろ、もともとの心筋症の定義が「原因不明の心筋の病気」だったくらいです。
より正確に表現すると
心臓の筋肉がやられる原因の候補はいくつもある。
しかし、あなたの愛猫が心筋症になった原因を言い当てるのはほぼ不可能。
となります。
以下からその原因の候補を説明していきます。
感染症が原因?
ウイルスなどが心臓に感染して、心臓の筋肉がやられてしまうというケースです。
人間の心筋症ではよく聞く話だったりします(出典)。
猫の場合はどうかと言うと、心筋症の猫からウイルスの遺伝子が見つかったという報告(出典)や、見つからなかったという報告(出典)とさまざまです。
個人的には一部の心筋症には感染症が関わっていそうな気がしますが、あまりはっきりしたことは言えません。
なんにせよ、動物病院で行う普通の検査では心臓からウイルスや遺伝子を検出することはできないので、実際にあなたの愛猫が「〜に感染したために心筋症になりました」と言われるケースはないでしょう。
遺伝が原因?
人間の心筋症には遺伝が関わっていることが分かっており、心筋症を起こす遺伝子の変異が複数見つかっています(出典)。
猫でも一部の品種では遺伝が関わっていると言われています。
たとえばメインクーン、ラグドール、スフィンクスという品種の猫では、遺伝子の変異によって、心臓の筋肉を作っているあるタンパク質に問題が出て、肥大型心筋症の原因となることが知られています(出典)。
ただし、遺伝が関わっているとしても
- 心筋症に関わる遺伝子を持っていたら心筋症になる
- 心筋症になる遺伝子がなければ心筋症にならない
- 遺伝子検査をすれば心筋症になるか分かる
とは限りませんので注意してください。
タウリン欠乏が原因?
猫が必要とする栄養素の1つにタウリンというものがあります。
拡張型心筋症と診断された猫でタウリンが不足しており、タウリンを補給したら回復した例が報告されています(出典)。
しかし、この報告は1987年のものと古く、キャットフードにタウリンがちゃんと含まれていなかった時代のものです。
今のキャットフードにはタウリンがしっかり入っていますので、偏った内容の食事を与え続けているケースでもなければ気にする必要はないでしょう。
犬については最近、穀物を使用しないフード(グレインフリーフード)と拡張型心筋症の関係が疑われていますが(出典)、今のところ猫で同様の報告はありません。
あなたの飼い方のせいではありません
ここまで説明してきたように、猫の心筋症の原因はほぼ不明で、病院に行けば明らかになるという性質のものではありません。
言い換えると、「飼い主の飼い方のせいで心筋症になった」という証拠はありません。
- 塩分をとりすぎるとなる
- 走らせたり興奮させるとなる
- 太らせるとなる
- ○○を食べるとなる
などの話を見聞きして自分を責める飼い主さんもいますが、確かな根拠もない話に振り回される必要はないかと思います。